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偏愛音盤堂

埋もれた名盤を掘り起こす墓掘り人。メタルやハードコアテクノなどをメインに、執拗に幅狭く。たまに新譜もやります。 (2013.03.05~)

Karyn Crisis' Gospel of the Witches / Covenant (2019)

2021.04.12 (Mon)
Covenant.jpg

Karyn Crisis' Gospel of the Witches / Covenant (2019.10.25)

1. Womb of the World [3:33]
2. Drawing Down the Moon [5:04]
3. Stretto di Barba [3:39]
4. Silver Valley [1:30]
5. Great Mothers [4:54]
6. Benevento [5:42]
7. Dea Iside [5:32]
8. Janara [4:29]
9. The Hours [3:12]
10. Diana Mellificia [4:50]
11. Circle of White Light [2:10]
12. Blood of the Mother [3:26]

total 47:55

カリン・クライシス (vo)
デヴィッド・ティソ (g, b, key)
ファビアン・ヴェストッド (dr)



米国カリフォルニア出身のプログレッシヴ/ドゥームメタル・バンドが2019年に出した2ndアルバムです。中心人物のカリン嬢とデヴィッド氏は2014年に解散したイタリアの変態ブラックメタル、Ephel Duathの元メンバーでもあります。

前作同様どろどろしたドゥームメタルを軸に、清らかさと穢らわしさをシームレスに繋ぎ合わせた孤高の芸術作品。リフはザリザリと刺々しく、ヴォーカルも透明感のあるクリーンからパワフルな咆哮、凶悪なデス声まで多彩な表現力。幅広い意味ではメタルの一種なんでしょうが実のところジャンル分け不能な、既成概念をぶち壊す音楽性。しかし自分たちのやっていることに100%の確信を持っているがゆえの説得力を強烈に感じます。

基本的な方向性は前作と同じながら、メロディアスに歌う場面が若干増えた感があり、結果としてキャッチーさはこちらの方が上かな。まあでもこの辺は好みの問題だと思います。

#1 "Womb of the World" は開始0秒からリフが強い。ヴォーカルパートも禍々しさ全開です。しかしその禍々しい中に清涼感のあるクリーンヴォーカルを混ぜ込むなど構成の妙が光ります。トライバルなドラムと不穏な響きのリードギターが切迫感を生み出しています。

#2 "Drawing Down the Moon" はマーチング風のドラムがかっこよく、メロディにも普遍的な哀愁がある1曲。ほぼ全編でギターがむせび泣いており、それをふわりと包み込むようなヴォーカルは月の光を和らげる朧のような効果を上げています。

#3 "Stretto di Barba" は不穏で凶悪なリフと儚げなクリーンヴォーカルの対称性が、夜の森に迷い込んだような不気味さと神秘性を感じます。

#4 "Silver Valley" は1分半ほどの小曲ながら、遠吠えのようなスライドギターとそれに呼応するかのようなカリン嬢のパワフルなシャウトが印象的。

#5 "Great Mothers" は重く絶望的なリフで幕を開け、スローにじっくりと進行。幾重にも重なる咆哮が緊張感を高めたと思ったら、1分48秒目あたりでそれがふっと途切れてクリーンなアルペジオの静寂パートへ。やがてバンドの音が入ってくるんですが、冒頭の不穏さが嘘のようなドラマティックな展開となります。終盤では再び冒頭の絶望パートへと還り、ある意味一安心。

ゴシックメタルを思わせる憂いたっぷりのアルペジオで幕を開ける#6 "Benevento"。この曲にはメタルっぽいリフもスクリームも入っていませんが、バラードとは言い難いオカルティックで禍々しい雰囲気が濃厚に漂ってます。特に2分54秒あたりからのヴォーカルは完全に呪文の詠唱に入ってます。

#7 "Dea Iside" はギターのフレーズに関しては割と普遍的な哀愁があるんですが、ヴォーカルが例によって大変な禍々しさ。さらにトライバルなドラムやヴォーカルの反復フレーズが儀式的でオカルティックな雰囲気を増幅してます。

#8 "Janara" はどす黒さ全開のリフと水面をゆったりと漂うようなパートを交互に展開させて緩急のメリハリを付けた曲。中盤の哀愁パートにおける潤いたっぷりのギターフレーズも大変に美味でございます。そして序盤のどす黒いパートももっかい持ってきて締め。

#9 "The Hours" は冷たいクリーンギターの零れ落ちるようなバッキングに切なげなヴォーカルが乗る、子守歌のような小曲。

枯れたアルペジオから始まり、ヴォーカルパートと同時展開されるドラマティックなギターフレーズも胸に迫る#10 "Diana Mellificia"。

#11 "Circle of White Light" は2分少々の小曲。穏やかなアルペジオと多重コーラスによるちょっとした聖歌。

#12 "Blood of the Mother" はもはや啼きのギターと化したフレーズが宵闇を怪しく飛翔する、哀愁と不気味さが入り混じるナンバー。低音弦によるザリザリとしたリフレインも効果的で、深き森を出でて人里にひたひたと迫りくる怪異のような趣があります。

オカルティックな神秘性と普遍的な哀愁を併せ持つ作品です。曲や全体の雰囲気はもちろんながら、カリン嬢のヴォーカル表現が本当に素晴らしく、全てを包みそして呑み込み、幸せのうちにドロドロに溶かされそうな感じがあります。







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Karyn Crisis' Gospel of the Witches / Salem's Wounds (2015)

2021.04.10 (Sat)
Salems Wounds

Karyn Crisis' Gospel of the Witches / Salem's Wounds (2015.03.09)

1. Omphalos [2:02]
2. The Alchemist [6:31]
3. Ancient Ways [4:36]
4. Aradia [3:44]
5. Mother [6:08]
6. Father [4:57]
7. Goddess of Light [4:02]
8. Howl at the Moon [5:47]
9. Pillars [3:18]
10. The Secret [3:35]
11. Salem's Wounds [4:50]
12. The Sword + The Stone [4:07]
13. The Ascent [8:20]

total 61:49

カリン・クライシス (vo)
デヴィッド・ティソ (g, b, key)
チャーリー・シュミッド (dr)



米国カリフォルニア発プログレッシヴ/ドゥームメタルバンドが2015年に出したデビュー作です。中心人物のカリン嬢とデヴィッド氏は2014年に解散したイタリアの変態ブラックメタル、Ephel Duathの元メンバーでもあります。

ブラックメタルにジャズを放り込み、アクロバティックで変態的な曲展開で聴き手を翻弄したEphel Duathでしたが、こちらはゆったり、あるいはじっとりしたCeltic Frost系列の刺々しさとドゥーム感が色濃く表れています。
曲の雰囲気や世界観も素晴らしいんですが、何よりカリン嬢のヴォーカルパフォーマンスが圧巻。繊細な囁き声からノーマルな歌唱、ストロングな咆哮からデス声まで変幻自在の表現力を駆使し、なおかつその多彩な表現総てがあるべき場所に収まって説得力を持って響きます。

いきなりじっとりと厭らしいディストーションのかかったギターで幕を開ける#1 "Omphalos"。トライバルなドラムも雰囲気を盛り上げます。アルバム全体のオープニングと言った位置づけです。

#2 "The Alchemist" は物憂げなアルペジオで幕を開け、カリン嬢のウィスパーボイスが重なります。1分35秒あたりからうねるようなリフがのしかかり、同一人物とは思えないストロングな咆哮を響かせます。どす黒いうねりと荒涼としたメロディのコントラストも鮮やかな1曲です。

#3 "Ancient Ways" は禍々しいイントロから浮遊感のあるヴォーカルパートへ。そこからさらに禍々しい咆哮が火を噴きます。曲調は不穏な禍々しさを滲ませつつも軸がしっかりしており、大地に根を張る巨木の様な安定感があります。

#4 "Aradia" は軽快なミドルテンポながら、巨獣の群れが突進してくるかの如き重厚さ。どろりとしたリフとメロディアスなギターフレーズを同時展開、テンポのいいドラムで駆動させ、重さと勢いを両立させています。終盤ではブラストビートも登場し切迫度がアップ。そのままフェイドアウトしてしまうのがちょっと残念かな。

#5 "Mother" はゆったりと流れるスローチューン。しかし一見穏やかに見えるその流れの下では、様々な情念が渦巻いています。冒頭は虚ろなアルペジオで幕開け。穏やかなヴォーカルパートへ。そして30秒目あたりから速くも不穏な雰囲気を漂わせ、強靭な咆哮やデス声が飛び交うカオティックな空間が展開。もはやこのデス声は聖歌のような荘厳さすら感じます。2分過ぎあたりからバッキングで流れるギターのメロディがいいですね。ヴォーカル表現の多彩さは当然ながらリードギターの細やかな表現力にも注目したい1曲です。

#6 "Father" はどこかアイリッシュ民謡調ではありますが、その雰囲気は邪悪。バグパイプのような音が終始鳴っていますが癒しとか牧歌とか言うよりは完全に秘儀密教の類です。ラスト1分の余韻が、かつては栄華を誇ったものの現在は忘れられた古代遺跡を思わせます。

#7 "Goddess of Light" は陰鬱なバラード。日本の古い歌謡曲みたいな辛気臭さもわずかに感じます。

ドゥーミーでオカルティックなリフで幕を開ける#8 "Howl at the Moon"。ヴォーカルも初っ端から邪悪さ全開で飛ばしまくってます。中盤では霧の湖のような静寂パートとなりますがそれも束の間。禍々しく刺々しいドゥームパートが再開されます。曲タイトルは「月に吼える」と言った意味ですが、まさにそれを表現しているかのようなスライドギターがグッド。

#9 "Pillars" は透明感のある歌声を中心としたバラード調の曲ですが、もちろんただのバラードのはずがなく、パワーのある咆哮もしっかり入ってます。しかし演奏面ではアルペジオやリードのフレーズがメインで、他の曲にあるようなドゥーミーなリフは使われてません。

#10 "The Secret" はどこかMassive Attack的なベースラインが特徴。ヴォーカルもリズミカルなフレーズを切れよく吐き出しており、ヒップホップに寄せていると言えなくもないかも。ダウナーであり神秘性も感じます。

#11 "Salem's Wounds" は前半はウィスパーボイスで静かに繊細に展開していくんですが、バッキングのフレーズやノイズ音にそこはかとない不穏さを感じます。そして2分09秒あたりで静寂の中に響く咆哮。バンドの音も本格的に入ってきてオカルティックで儀式的な盛り上がりを見せます。

#12 "The Sword + The Stone" は希望を感じさせる明るい音使いが意外で印象的。しかし後半は一気にうねるようなダークさが押し寄せます。この曲は本作の中でも上位レベルで好きです。

ラストの#13 "The Ascent"。序盤はクリーンギターのストロークとヴォーカルによる静かなパート。1分50秒あたりからバンドの音が入ってくるんですが、ここのギターの単音リフや2分28秒目から始まる絶望的なメロディに被さる、何種類ものヴォーカルの厚みが圧巻。なお曲本編は5分20秒ほどで終わり、しばらく無音が続きます。その後6分ちょうどあたりから隠しトラック的にちょっとした曲が入ってる構成です。

世界に向けた愛と憎悪の吐露。このクリーンな歌声から強靭な咆哮までひっくるめて、大地と海を統べる母の如き存在感を示しています。幅広い意味ではメタルの一種なんでしょうが、ドゥームなのかデスなのかハードコアなのか、ちょっと分類不能な音楽でもあります。このヴォーカルスタイルも、既存の女性ヴォーカルメタルものとは一線を画すユニークさ。全てにおいて既成概念をぶち壊していながら孤高の芸術性も備わった傑作です。







Mitochondrial Sun / Mitochondrial Sun (2020)

2021.04.08 (Thu)
Mitochondrial Sun

Mitochondrial Sun / Mitochondrial Sun (2020.02.14)

1. Ur Tehom [3:16]
2. Chronotopes [5:19]
3. Braying Cells [4:51]
4. Stars Beneath the Sea [3:44]
5. Nyaga [4:20]
6. Celestial Animal [7:05]
7. Arkadia [3:49]
8. The Void Begets [3:12]
9. Entropy's Gift [2:44]
10. The Great Filter [4:46]

total 43:02

ニクラス・スンディン (everything)



スウェーデン出身で、元Dark Tranquillityのニクラス・スンディンが新たに立ち上げた電子音楽ユニット、Mitochondrial Sunが2020年に出した1stアルバムです。

全編インストでメタル要素も希薄なんですが、メロディ面では確かに美しさと気品があり、Dark Tranquillity色が濃いように感じます。ゲスト奏者によるチェロやピアノなどの生楽器も取り入れていて、曲によってはかつての同僚、マーティン・ブランドストロムがキーボードで参加しているものもあります。ゴシック寄りの曲からダークで激しめのクラブミュージック寄りの曲まで曲の幅は広く、多彩にして繊細な音の重なりを楽しめます。

#1 "Ur Tehom" はピアノのリフレインが主題の、夜霧の立ち込める人気のない街中が似合いそうな憂いと潤いのあるオープニングトラック。

#2 "Chronotopes" は物悲しいチェロとピアノのバッキング。控えめな電子ビートが織りなす雨の情景。2分25秒目あたりからのバッキングトラックは力強さがあっていいですね。

#3 "Braying Cells" は主題となるリフがどこか禍々しく不穏なんですが、1分すぎたあたりから入ってくる主旋律にキャッチーさがあり、禍々しいバッキングと不思議な調和を見せています。どこかファンタジックな要素もあり、今どきのナウなヤングはこういう曲をダンジョンシンセっぽいとありがたがったりするんでしょうか。

#4 "Stars Beneath the Sea" はかつての同僚、マーティン・ブランドストロムが参加。前半は仄暗く静かな雰囲気なんですが、2分22秒目からの展開が何とも言えない広がりとドラマ性があります。この四つ打ちのベースラインもいいですね。

#5 "Nyaga" は静かで繊細な曲ながら、近未来SF感が濃厚。楽曲後半に流れるトレモロのようなノイズ音もいい感じです。

#6 "Celestial Animal" も4曲目同様Dark Tranquillityのマーティンが参加しています。さらにピアノとチェロも入っており電子音と生楽器が織りなすメロディやハーモニーも美しく、ドラマ性も本作イチなのでは。序盤はしっとりと室内楽のような雰囲気なんですが2分40秒目から8ビートのリズムが入ってちょっと80年代っぽい雰囲気になります。このパートもまたいいですね。

#7 "Arkadia" は柔らかく空間を覆うようなシンセの音と、氷を打ち付けるような冷たくアタック感の強いリードが特徴。洞窟の中にそびえる鍾乳洞のような神秘性のある曲です。

#8 "The Void Begets" はスティールギターが主旋律を担当しており、Pink Floyd的な浮遊感。柔らかく幻想的な雰囲気を演出してます。

#9 "Entropy's Gift" もエコーが効果的に浮遊感を演出している、どこか淡い色合いの曲。

#10 "The Great Filter" は開始0秒から本作一番のダークさ&重厚さで始まります。このダークな雰囲気は曲の中盤まで続き、その後はアルバム全体のエンディングと言わんばかりの静かなアンビエントパートとなりアルバムは幕を閉じます。

全体的に近未来的な雰囲気が漂っており、21世紀を舞台にした古いSF小説のお供に本作を流しながら読むのもいいかもしれません。メロディや雰囲気の美しさや演出力はさすがと言ったところです。











Liturgy / Origin of the Alimonies (2020)

2021.04.04 (Sun)
Origin of the Alimonies

Liturgy / Origin of the Alimonies (2020..11.20)

1. The Seperation of HAQQ from HAEL [4:32]
2. OIOION's Birth [1:47]
3. Lonely OIOION [4:41]
4. The Fall of SHIEYMN [4:47]
5. SIHEYMN's Lament [3:42]
6. Apparition of the Eternal Church [14:03]
7. The Armistice [3:48]

total 37:17

ハンター・ハント・ヘンドリクス (g, vo)
ベルナルド・ガン (g)
ティア・ヴィンセント・クラーク (b)
レオ・ディドコフスキィ (dr)



アメリカはニューヨーク出身のエクスペリメンタル・ブラックメタル、Liturgyが2020年に出した5thアルバムです。

前作は前人未踏の極地に達した彼女が次元を突き抜けた世界観を展開。ブラックメタルの、そして音楽という表現の持つ可能性をさらに押し広げた傑作アルバムでした。それはまさに天上にて異形の存在が無数に立ち並び、祝福の狂音を奏でるが如し。その音はあまねく人類に降り注ぎ、ある者は発狂し、ある者は受容し、そしてある者はそこに神を見たのです。

対して本作は演奏時間も30分台とコンパクトで、前作ほどぶっ飛んではいません。しかしやはり人類を選別する祝福の狂音は健在で、予測不能でアクロバティックな展開です。クラシックとブラックメタルを全く独創的に融合させ、前作で衝撃だった、あの世界がバグったようなグリッチ音も効果的に使用。さらに王道的なメタルリフを設けたパートもあり、普遍性と独創性を左右に広げて綱渡りをしているような作品です。

#1 "The Seperation of HAQQ from HAEL" は、曲の大半は管楽器やストリングスによるアンビエントなパート。どこか日本の雅楽を置思わせる雰囲気もあります。そんな雰囲気の中、2分30秒あたりでさらりと音飛びっぽい演出を入れるところがオシャレ。そこを境に徐々に不穏な雰囲気となり、ラスト45秒でバンドの音が入り、ファンファーレのような盛り上がりを見せます。

1曲目からそのまま続く#2 "OIOION's Birth" は、チャーチオルガンや管楽器をメインとしたダークなアンビエント曲。

#3 "Lonely OIOION" は本作のメイントラックと言えるかも。荘厳なオルガンのイントロを経てバンドの音が入り、あのトレモロが炸裂。私が『祝福の狂音』と呼んでるきらめく音の瀑布が降り注ぎます。後半の執拗な叩き付けリフも圧巻。いわゆるシンフォニック・ブラックとは全く違った方法論でオーケストラとブラックメタルを融合させており、彼女の天才を超越した変態センスが炸裂しています。

#4 "The Fall of SHIEYMN" はトランペットの爽やかな音色とストリングスが軋むような不穏なサウンドが同時展開。じわじわと不穏さの比重が増していきます。即興演奏のような場面を経た後に、長い長いトレモロを引き延ばして終わります。

#5 "SIHEYMN's Lament" はピアノをバッキングに凶悪なヴォーカルが吼え、しかしベースラインはどこかヒップホップ的なノリがあって面白い。中盤からはブラックメタル的展開となるのですが、ストリングスが優美に楽曲を彩っていていいですし、2分20秒からの王道メタル的なリフも大地を思わせる力強さを感じます。終盤はさらにヘヴィなリフがうねり、4分に満たない曲ながら圧倒的なドラマ性を感じます。

#6 "Apparition of the Eternal Church" は14分に及ぶ大曲。冒頭は極彩色の悪夢。2分46秒から堰を切ったようにブラストで疾走し、異形蠢く天界へと吸い込まれます。一瞬の静寂の後、ファンファーレのようなトレモロと狂気じみた不協和音のピアノのバッキング。曲が進むにつれ緊張感は増していき、間断なく降り注ぐ音のきらめきは人類をあまねく狂わせていきます。9分23秒目あたりでようやくヴォーカルパート。凶暴なスクリームは演奏陣と1つに溶け合い狂気の塊となって迫ってきます。

#7 "The Armistice" は荒々しくも重厚なリフと幾重にも折り重なる優美なストリングスによるエンディング。時折挿入されるグリッチ音と相まって、崩壊した世界が再生されているかのような情景が浮かびます。

聴き手の脳内に圧倒的情報量を注ぎ込んで異界へと誘う、前代未聞の音楽作品。世界の崩壊と再構築が、この40分に満たない作品の中に詰まってます。





Hypocrisy / End of Disclosure (2013)

2021.03.31 (Wed)
End of Disclosure

Hypocrisy / End of Disclosure (2013.06.19)

1. End of Disclosure [4:47]
2. Tales of Thy Spineless [4:36]
3. The Eye [5:41]
4. United We Fall [4:51]
5. 44 Double Zero [4:28]
6. Hell Is Where I Stay [4:34]
7. Soldier of Fortune [4:52]
8. When Death Calls [3:54]
9. The Return [6:07]
10. Living Dead (bonus track) [3:51]

total 47:36

ピーター・テクレン (vo, g, key)
ミカエル・ヘッドルンド (b)
ホルグ (dr)



スウェーデンのデスメタルバンド、Hypocrisyが2013年に出した12枚目のアルバムです。アルバムタイトルは「開示の終わり」と言った意味ですが、要は「人類滅亡のカウントダウンが始まった」ということです。滅びよ人類。

前々作でツインギターを擁する4人体制となり大胆なメンバーチェンジを図ったHypocrisyですが、それも束の間。早くもトリオ編成に戻ってしまいました。

音楽性としましては安定と信頼のHypocrisyスタイル。王道のデス路線でありながら狂気じみたハイピッチのヴォーカルや、近未来的でSF的な音作り。ゴシカルな要素や絶望的ながら美しいメロディなど彼らならではの境地に達しています。
このバンドの場合基本的な音楽性の骨子は「The Final Chapter」(1997年 5th) あたりで確立されており、以降はデスラッシュ気味だったりアメリカンメタル寄りだったり多少の変化はありながらも、自らが確立した音楽性を順当に進化させていってる感じです。
本作も当然ながらその延長線上にあるわけで、やはり流石のクオリティ。ミドル/スローチューンの割合が高めかなとは思うんですが、荒涼とした中に美しさと刺々しさがあり、曲によっては荘厳さすら感じます。

#1 "End of Disclosure" は絶望的メロディで彩られたミドルチューン。メロデス/ゴシック要素の濃い曲です。アルバム初っ端から聴き手を絶望に叩き落す姿勢が最高ですし、実際曲そのものも良いのですよ。

#2 "Tales of thy Spineless" はイントロからブラストビートが景気よく炸裂する疾走チューン。デスメタルの原初を思わせるオールドスクールなリフと、サビ部分の荘厳さとの対比が鮮やか。2コーラス目が終わってからキャッチーなアップテンポに転ずるところも印象に残りますし、何より曲全体を覆う虚ろで寒々しいキーボードが効果大です。

#3 "The Eye" は基本的にはミドルテンポながら突進力の高いメロデスチューン。サビ部分には日本的なわびさびすら感じます。ゴシックからスラッシュまで多彩な要素が溶け込んでますし、ドラマ性という点では本作でも上位に位置するのでは。

#4 "United We Fall" はスタスタとした疾走感のデスラッシュ曲。いにしえのデスメタルみたいな不穏な半音階リフと、それをさりげなく彩る控えめなメロディがオシャレ。

#5 "44 Double Zero" はダウンストロークのリフが強いアップテンポ曲で、無骨さと抒情性を両立させてる作曲センスがさすがです。

#6 "Hell is Where I stay" は重くうねり叩き付けるリフが凶悪なスローチューン。メロディ要素はあまりないですが、それでも邪悪な荘厳さを感じます。

#7 "Soldier of Fortune" もスローな曲ですが、こちらはいかにも北欧らしい寒々としたコード進行の抒情的なナンバー。メロデスとブラックメタルのギリギリの境界線上で棘のある冷気を放出しています。

#8 "When Death Calls" はイントロ部分はブラストビートで凶悪な突進力がありますが、ヴォーカルパートに入ると減速して重厚なスローパートに。これはこれで絶望的な雰囲気があって良いです。あとテンポ自体は確かにスローなんですがドラムの躍動感が凄まじく、そこはやはりホルグ氏の成せる業かと。なお中盤では再びブラストで加速し、イントロ同様凶悪な突進力で突き抜けます。

本編ラストの#9 "The Return" はいかにも人類を終焉に導くドゥーミーな曲。重いリフと虚ろなメロディのトレモロを対比させ美しくも絶望的な情景を描き出しています。

ボーナストラックの#10 "Living Dead" は軽快なアップテンポでノリもよく、そしてリフは程よいザクザク具合。ヴォーカルは凶悪なグロウルという非常にかっこいい1曲。サビ部分の仄かな抒情性もグッド。

なんか後半にスローチューンが固まってますが、曲が良いためダレることはありません。アメリカと北欧、両方のスタイルを取り込み、王道でありながらかっこよく仕上げています。この、王道だけど個性が際立っているというのは大きな強みですね。凶悪さと抒情性を高いレベルで融合させた傑作です。90年代初頭にデビューしたデスメタル第1世代にして、未だに鮮烈な作品を生み出している…。これって凄いことですよ。







Hypocrisy / Virus (2005)

2021.03.23 (Tue)
virus.jpg

Hypocrisy / Virus (2005.09.22)

1. XVI [0:16]
2. War-Path [4:24]
3. Scrutinized (feat. Gary Holt) [4:25]
4. Fearless [4:24]
5. Craving for Another Killing [3:50]
6. Let the Knife do the Talking [4:15]
7. A Thousand Lies [4:52]
8. Incised Before I've Ceased [4:29]
9. Blooddrenched [3:43]
10. Compulsive Psychosis [4:15]
11. Living to Die [5:42]
12. Watch Out (demo) (bonus track) [3:34]

total 48:02

ピーター・テクレン (vo, g, key)
アンドレアス・ホルマ (g)
ミカエル・ヘッドルンド (b)
ホルグ (dr)



スウェーデンのデスメタルバンド、Hypocrisyが2005年に出した10thアルバムです。

前作からわずか1年という短いブランクですが、バンド内部は大きな変革があった模様で、まずドラマーが元Immortalのホルグに交代。さらにセカンドギタリストを加えた4人体制となっています。Hypocrisyが4人体制となるのは「Osculum Obscenum」(1993年 2nd) 以来12年ぶりのことですし、ツインギター体制に至ってはバンド史上初。思い切ったことをしたものです。

音楽性に大きな変化はなく、そこは流石の安定感。冷徹で刺々しく、どこか終末的なメロディの漂う、オールドスクールのスウェディッシュ・デスを基盤としながら現代の要素も取り入れて発展してきたHypocrisy流デスメタルが展開されています。音楽性は王道寄りでありながら、他のどのバンドにも似ていない個性があるのがこのバンドの強みです。

#1 "XVI" は16秒ほどの短いイントロ。ちなみタイトルはローマ数字で16を意味します。

#2 "War-Path" はイントロの荒涼としたメロディとブラストビートが早速期待感を煽ります。ヴォーカルパートに入ってもバックではメロディアスなトレモロが紡がれており疾走感と抒情性のバランスも見事。中盤のミドルパートも堂々とした荘厳さがあってかっこいい。

#3 "Scrutinized" は重い塊のようなリフを繰り出す突進力の高い曲。この鉛色の世界観が、サビに入ると鮮やかな、しかし物悲しげなメロディによって一気に色づきます。さらにソロパートに入ると一気にスラッシュ度が高まりますが、ここではExodusのゲイリー・ホルトがゲスト参加しています。

#4 "Fearless" はミドルテンポのメロデスチューン。この2005年という時代に90年代スタイルのメロデスをやってる点に最大限の賛辞を送ります。落ち着いた曲調ではありますが、身を切るような冷たさと慟哭のメロディが炸裂しています。

#5 "Craving for Another Killing" は情け容赦のない無慈悲なデスラッシュチューン。ブラストビートとトレモロリフで爆走する場面もあり、ピーターの高音スクリームと相まってファスト・ブラックのようにも聴こえます。その一方で中盤のミドルパートでは情感こもったリードギターが上品に紡がれ、突っ走るだけではないドラマ性を演出しています。

#6 "Let the Knife Do the Talking" はじっとりとしたミドルチューンで、粘つくような狂気と不穏さを感じます。メロディ要素もあるにはありますが、それをも上回る殺伐さ具合です。

#7 "A Thousand Lies" は重厚なスローチューン。6曲目ほど殺伐とはしておらず、クリーンギターのアルペジオも交えながらどこかゴシカルな香りも漂います。キーボードやオーケストラの類は入っていないにもかかわらず、シンフォニックな荘厳さがあります。

#8 "Incised Before I've Ceased" は冷徹で機械的なミドルチューンで、その割に手数足数の多いドラムが印象的。ディストピアっぽい閉塞感が終始支配的な曲です。

ミドル~スロー曲が3曲続いてそろそろダレそうなところに登場するのが、ブルータルな疾走曲の#9 "Blooddrenched"。この、人間を切り刻むような残虐なリフはアメリカのデスメタル…というかCannibal Corpseあたりに近いものがあるように感じます。

#10 "Compulsive Psychosis" は親しみやすい(?) アップテンポ曲で、実際本作としてはかなりキャッチーな曲なのでは。しかし1コーラス目が終わると突進力の高いリフと2ビートに切り替わって無慈悲に疾走。サビ部分では絶叫ヴォーカルでありながら聖歌のような荘厳さもあり、この二転三転する場面展開もさすがのかっこよさです。

本編ラストの#11 "Living to Die" は滅びゆく人類に向けた鎮魂歌(レクイエム)。シンフォニックなキーボードが彩るスローチューンで、サビ部分の澄んだ歌声も悲しく美しく響きます。

王道スタイルでありながら多彩な曲があるべき場所に収まっており、アルバム全体の流れもいい。そらまあ中盤ちょっとダレますが後半で巻き返しますし、地に足の着いた良曲揃いのアルバムです。







Hypocrisy / The Arrival (2004)

2021.03.16 (Tue)
arrival (hypocrisy)

Hypocrisy / The Arrival (2004.03.24)

1. Born Dead, Buried Alive [4:21]
2. Eraser [4:26]
3. Stillborn [3:24]
4. Slave to the Parasites [4:58]
5. New World [4:10]
6. The Abyss [4:30]
7. Dead Sky Dawning [4:27]
8. The Departure [5:18]
9. War Within [4:54]

total 40:24

ピーター・テクレン (vo, g, key)
ミカエル・ヘッドルンド (b)
ラーズ・スゾケ (dr)



スウェーデンのデスメタルバンド、Hypocrisyが2004年に出した9thアルバムです。

まずこのジャケットに衝撃を受けましたよ。初めて目にしたのは確かBURRNのアルバム評だったか…その辺の記憶はあいまいですが、とにかく初見で何これって思ったのは強烈に覚えてます。メタルダサジャケ選手権があったら、間違いなく最終選考まで残るレベルです。

さて肝心の内容面ですが、そこは流石のかっこよさ&安定感。メタルの世界においてはジャケットがダサいほど中身がかっこいいというジンクスがありますが、本作もまた例外ではないようです。刺々しい凶暴さに、冷徹にして美しいメロディ。荘厳なゴシック要素からどこか宇宙的なスケール感まで内包しており、Hypocrisyワールドはますます深みと広がりを増しています。

全体的に疾走曲の割合はそれほど多くなく、ミドル~スローテンポの曲が多いんですが、そっちのクオリティが非常に高いと言いますか、荘厳で美しくそして非常な悲しみに彩られています。

潤いたっぷりのツインリードで荘厳に幕を開ける#1 "Born Dead, Buried Alive"。1分36秒目あたりからこれぞスウェデスって感じで加速&突進。そして2コーラス目が終わったところで冒頭の潤いたっぷりツインリードが再度登場するなどドラマ性もばっちりです。そしてどこか宇宙的な雰囲気があるのもポイント。

PV化された#2 "Eraser" はゴシカルなミドルチューン。全体的に悲壮感漂う雰囲気なんですが、その中にあってサビ部分の鮮やかなギターフレーズが印象的。

#3 "Stillborn" はサイバー感のあるキャッチーなアップテンポ曲。冒頭のリフがかなりゴリゴリしていて良いですね。その一方でBメロやサビ部分では流麗なメロディが乱舞しており、その対比も良いバランスです。

#4 "Slave to the Parasites" は悲壮感あふれるミドルチューン。この曲もまた重量感とメロディの対比が絶妙です。聴き手が重苦しいリフによるプレッシャーに限界を迎える寸前に、哀しくも美しいメロディが表れて心を掬い上げます。

#5 "New World" は本作では貴重な直球デスメタル。このサビ部分の多重録音コーラスは当時Soilworkなんかもやってた手法ですね。ただこちらの方がよりデスメタルの原典に近い感じはします。あとソロパートの、3連符で疾走して抒情的メロディを撒き散らす様もかこっこいい。

#6 "The Abyss" は名が体を表しすぎている激重スローチューン。タイトル通り奈落に引き摺りこまれそうな質感があります。ピーターもこの曲ではいつもの高音スクリームではなく低めのグロウルや重々しいクリーンヴォーカルで歌っており、雰囲気もばっちり。重い中にもどこか希望的なメロディがあるのが救い。

#7 "Dead Sky Dawning" はアップテンポのメロデスチューン。AメロもBメロもサビも全パートがメロディアスなリフ&コード進行で彩られています。しかしただのメロデスで終わらないのがさすがHypocrisyと言ったところで、メロディアスながら冷徹で尖りまくった凶悪な音作りがグレイト。真正面から猛吹雪を浴びてる感じです。

#8 "The Departure" も美しさと悲壮感があふれまくってるスローチューン。時折入ってくる明るいメロディが、雲の切れ間から差し込む光のように美しく、更なる物悲しさを演出しています。

#9 "War Within" は行進曲のようなノリのミドルチューン。打ち下ろすような刻みリフと引き摺るようなリフを巧みに使い分け、冷ややかなキーボードでドラマ性を加味。さらにサビ部分の切ないトレモロで聴き手を悶絶させるというよく練られた1曲です。

ほぼ総ての曲が5分以内に収まっており、アルバム全体でも40分。コンパクトながらアルバムの流れも良いし濃密なドラマの詰まった作品で、熟練した作曲センスを味わえます。まあでもジャケットで損してる感はあるよね。どうしても。







Hypocrisy / Catch 22 (2002)

2021.03.01 (Mon)
Catch 22

Hypocrisy / Catch 22 (2002.02.21)

1. Don't Judge Me [2:28]
2. Destroyed [3:56]
3. On the Edge of Madness [4:58]
4. A Public Puppet [3:40]
5. Uncontrolled [4:41]
6. Turn the Page [4:05]
7. Hatred [4:46]
8. Another Dead End (For Another Dead Man) [3:44]
9. Seeds of the Chosen One [5:06]
10. All Turns Black [4:24]
11. Nowhere to Run (bonus track) [3:19]

total 45:23

ピーター・テクレン (vo, g, key)
ミカエル・ヘッドルンド (b)
ラーズ・スゾケ (dr)



スウェーデンのデスメタルバンド、Hypocrisyが2002年に出した8thアルバムです。

刺々しい攻撃性の中に身を切るような哀愁を盛り込み、独自の進化を遂げたこのバンド。本作もまた、攻撃性はそのままにさらに楽曲の幅が広がったバラエティ豊かな作品です。ただこのあたりが飽和点な気もしますね。当時の流行を積極的に取り入れてる感があり、SlipknotっぽかったりIn Flamesっぽかったりするパートもちらほら。これ以上やるとあざとさが鼻に付くけど、いいところで押さえているといった感じ。これもまたピーターのセンスかな。
そのピーターのヴォーカルは高音のスクリームが中心なんですが、ダミ声でメロディを追う場面もあり、そしてそれが典型的なメロデスとは一味違ったシャープさを生み出しています。

#1 "Don't Judge Me" は2分少々で駆け抜けるデスラッシュチューン。サビ部分のリフにわずかなメロウさがありますが、激情と勢いがほとばしりまくってます。

#2 "Destroyed" はイントロのリフからIn Flamesかな?ってなりそうなキャッチーなアップテンポチューン。ヴォーカルはなおも変わらず凶悪な絶叫なのでご安心ください。サビ部分のメロディアスなコーラスは新たな試みと言えるかも。良いと思います。

#3 "On the Edge of Madness" はゴシカルなミドルチューン。当時の欧州ではこういう適度に愁いのあるゴシックメタルが流行ってたものです。Aメロ部分のリフは意外と力強さがありますし、Bメロ~サビへと続くメロウなリフといい対比を成しています。この曲も、サビはメロディアスで印象深いものとなっています。

#4 "A Public Puppet" はアメリカのメタルっぽいゴリゴリした質感の曲。2002年といえばメタルコアの第1派がアメリカからそろそろ出てくるかなって時期だったんですが、スウェーデンの方から先手を打ってきた感じですかね。まあメタルコアのルーツの1つが北欧メロデスではあるんですが、ピーターの先見の明が光る1曲とも言えるかも。

#5 "Uncontrolled" はキャッチーさと哀愁の入り混じるミドルチューン。ギターのハーモニーとダミ声によるメロディがいい感じに合わさって、デスメタルなのになぜか春風のような爽やかさがあります。

#6 "Turn the Page" はゴリゴリのリフで突進するアップテンポ曲。凶悪でありながらキャッチー。このノリはいいですね。ただサビ部分の歌メロが、色々音を重ねてるっぽいのは判るんですがなんか雑というかハーモニーが成立してない気がするので、そこはどういうつもりなのか気になるところでしょうか。ピーターほどの人が意味もなくこんなことをするはずはないと思うし。

#7 "Hatred" は90年代モダンヘヴィネス北欧編といった無骨でストロングな曲ですが、サビ部分での広がりのある展開や、後に続くストリングスや浮遊パートなど抒情的なドラマが織り込まれており、場面ごとに全く違った表情を魅せます。

#8 "Another Dead End" はストレートな疾走曲。バラエティ豊かな曲に混じるデスラッシュの良心。殺伐さとキャッチーさが上手いことまとまっていて、真新しさはないものの王道でかっこいい1曲です。

#9 "Seeds of the Chosen One" は憂いのあるミドルチューンなんですがどこか勇壮な雰囲気もあり、80年代の正統派メタルをHypocrisyフィルターに通したような感じ。これもまたツボを押さえたメロディが印象深い。

本編ラストの#10 "All Turns Black" はクリーンヴォーカルによるバラード。Hypocrisyにはたまーにこういう曲がありますが、この宇宙的な浮遊感が好き。前作のラスト曲 "Deathrow" みたいにズシンと重くて絶望的なのもいいですが、こういうのもまたいいものです。

ボーナストラックの#11 "Nowhere to Run" は完全にIn Flamesな3拍子のメロデス曲。しかしこの殺伐としたリフはやはりHypocrisyですね。殺気と哀愁の絶妙なブレンドが味わえます。

前作の方向性をさらに発展させたとも言えますが、いろんなタイプの曲が入っており、これ以上だとやり過ぎかな…という絶妙なラインを攻めています。そこはさすがピーターと言いますか、似たような曲を並べず、なおかつアルバムの流れに統一感がある。1曲1曲の出来もさることながら、曲順にも非常に気を配っている繊細なメタル作品です。





Hypocrisy / Into the Abyss (2000)

2021.02.23 (Tue)
into the abyss

Hypocrisy / Into the Abyss (2000.10.18)

1. Legions Descend [3:54]
2. Blinded [4:18]
3. Resurrected [5:36]
4. Unleash the Beast [3:29]
5. Digital Prophecy [3:07]
6. Fire in the Sky [4:58]
7. Total Eclipse [3:09]
8. Unfold the Sorrow [4:28]
9. Sodomized [3:18]
10. Deathrow (No Regrets) [5:47]
11. Roswell 47 (demo) (bonus track) [4:47]

total 46:47

ピーター・テクレン (vo, g, key)
ミカエル・ヘッドルンド (b)
ラーズ・スゾーケ (dr)



スウェーデンのデスメタルバンド、Hypocrisyが2000年に出した7thアルバムです。

2002年ごろに初めて買ったHypocrisyのアルバムで、その凶悪かつ抒情的な世界観に一気にはまりました。Hypocrisyは作品によって疾走メインだったり抒情メインだったりしますが、本作は完全なる疾走チューン満載のアルバムです。ピーターのヴォーカルはもはやブラックメタル張りの凶悪さですし、デスラッシュじみた突進力も十分。それでいてジリジリとした抒情味もあり、Hypocrisy歴代のアルバムからしても非常な高クオリティのアルバムなのでは。

もし今からでも新規でHypocrisyを聴いてみようと思う人は、迷わず本作と、あと「The Final Chapter」(1997年 5th) の2枚をお勧めします。

#1 "Legions Descend" は初っ端から無慈悲に畳みかける激烈デスメタルチューン。メロディ要素は抑え目で、初期の頃のような激烈具合が楽しめます。

#2 "Blinded" はHypocrisy全曲の中で1番好きな曲。イントロの硬質なリフから早速かっこいいですし、全体を覆う疾走感も素晴らしい。そして何よりサビ部分の寒々しくもメロウなトレモロが最高すぎますし、1コーラス終わってからの「ズズンズンズンズン」という叩き付けるようなリフも良い。凶悪さとドラマ性が詰まった名曲です。

#3 "Resurrected" は終末的雰囲気漂うスローチューン。刺々しく殺伐とした中に、抒情味をたっぷり織り込んでいます。しかしヴォーカルは相変わらずの凶悪具合なので、そのギャップが得も言われぬ雰囲気を醸し出しています。

#4 "Unleash the Beast" はどこかキャッチーなノリのあるアップテンポ曲。ヴォーカルの無機質な絶叫と合わさって、どこかインダストリアルな香りもします。今後の方向性を予感させる曲と言えるかも。

#5 "Digital Prophecy" は渦を巻くような単音リフが荒れ狂う疾走チューン。メロディアスではあるんですが、どこか冷徹な雰囲気が色濃いです。

#6 "Fire in the Sky" はゴシカルな雰囲気と、荘厳さ&威圧感が束になったミドルチューン。暗く重い中にもどこか重すぎないバランス感があります。そして3分03秒あたりからのシンフォニックパートが、本家のシンフォ・ブラック勢にも引けを取らない圧巻具合です。

#7 "Total Eclipse" はどこかオールドスクールな響きのある不穏なデスメタル曲。このオールドスクールな曲をHypocrisyならではのヘヴィかつ冷徹な音質でやっておりまして、非常にかっこよく仕上がっております。なおメロディ要素はほぼゼロです。

#8 "Unfold the Sorrow" はキャッチーながらどこか宇宙的な雰囲気のミドルチューン。1分11秒あたりからのメロディもSFちっくな感じがあります。

#9 "Sodomized" は初手から単音ギターが鋭く切り込んでくる凶悪なデスメタル曲。スタスタと走る疾走パートと、いかにもオールドスクールなもっさりとヘヴィなパートで起伏を付け、緩急豊かに仕上げています。

本編ラストの#10 "Deathrow" はラストに相応しすぎる葬送曲。ひたすら陰鬱でありながら、胸を打つ慟哭要素も満載。世界の終焉に鳴り響く人類の挽歌です。サビ部分のクリーンヴォーカルも効果的。

1曲1曲のクオリティもさることながら、アルバム全体としても非常に流れが良い。凶悪な面から抒情的な面まで、これ1枚にHypocrisyの総てが詰まっていると言ってもいいでしょう。最高傑作として「Final Chapter」と甲乙つけがたい面はありますが、個人的な思い入れも込みで、本作をHypocrisyの最高傑作だといたしたいところであります。







Hypocrisy / Hypocrisy (1999)

2021.02.14 (Sun)
Hypocrisy.jpg

Hypocrisy / Hypocrisy (1999.09.21)

1. Fractured Millennium [5:14]
2. Apocalyptic Hybrid [4:05]
3. Fusion Programmed Minds [4:39]
4. Elastic Inverted Visions [6:16]
5. Reversed Reflections [4:29]
6. Until the End [5:54]
7. Paranormal Mysteria [4:39]
8. Time Warp [3:52]
9. Disconnected Magnetic Corridors [5:25]
10. Paled Empty Sphere [6:16]

-bonus tracks-
11. Selfinflicted Overload [4:46]
12. Elastic Inverted Visions (demo) [6:04]
13. Falling Through the Ground [4:00]

total 65:31

ピーター・テクレン (vo, g, key)
ミカエル・ヘッドルンド (b)
ラーズ・スゾーケ (dr)



スウェーデンのデスメタルバンド、Hypocrisyが1999年に出した6thアルバムです。

前作を“最終章”としてバンドの活動に終止符を打つつもりだったピーターですが、もろもろの問題が解決し、めでたくバンドは継続することとなりました。本作をセルフタイトルにしたのも、そうした“再出発”の意味合いを込めたものと思われます。
前作はその制作背景からして悲痛さやダークさが前面に出ており、なおかつ非常にハイクオリティな内容でした。対して本作は、明るく希望に満ちた…なんてことは決してないんですが、メロディ要素がさらに増量。曲によっては完全にメロデスになってるものもあり、ゴシック的な曲からハードコア的な曲まで幅広く揃ってます。肌を突き刺す暴風雪のようなサウンドもますます刺々しさを増しており、攻撃性と哀愁のコンビネーションはさらなる高みに昇華しています。

シンフォ・ブラックかな?と思ってしまう壮大なストリングスで幕を開ける#1 "Fractured Millennium"。曲全体の雰囲気はゴシカルなミドルチューンなんですが、ピーターのハイピッチなスクリームが完全にブラックメタルで、例えば後年のDimmu Borgirがやろうとしていたことを、何年も前に先取りしてしまっているような感じです。

#2 "Apocalyptic Hybrid" は激烈疾走チューンで、初期の面影を色濃く残す曲。このバンド、初期の頃からこういうデスラッシュっぽいことやってましたしね。そしてメロウな要素もさりげなく取り入れ、金属質な曲をほんのり鮮やかに彩っています。

#3 "Fusion Programmed Minds" はギャロップ風のリフにメロディアスなフレーズという、正統派メタル要素のあるメロデス曲。しかしピーターのヴォーカルはこういった曲でも壮絶な絶叫です。終盤の3分25秒あたりでさらに爽やかなパートに展開するのもいいですね。

荒涼としたアルペジオで幕を開ける#4 "Elastic Inverted Visions" はメランコリックなスローチューン。暗い冬の情景を想起させますが、4分17秒目からのギターソロは割と熱く弾きまくってます。

#5 "Reversed Reflections" は完全なるメロデス曲。初期のIn Flamesっぽい感じです。テンポはそれほど速くないんですが、メロディアスなフレーズが次から次へと流れてきますし、一部クリーンヴォーカルの箇所もあったりとこれまでなかったタイプの曲かも。2分33秒からの勇壮なコーラスパートが好き。

#6 "Until the End" はほとんど葬送曲みたいになってるダークなスローチューン。しかし美しく荘厳でもあり、このバランス感覚はさすがと言ったところです。

#7 "Paranormal Mysteria" はイントロを始め随所にメロディアスな要素と、それとは対照的ないかにもデスメタルのスローチューンって感じのヘヴィなリフを展開。本作の中では地味な部類かな。

#8 "Time Warp" は濃密な刻みリフが濁流のように押し寄せるデスラッシュチューン。ヴォーカルもノーマルなシャウトにエフェクトがかかってる感じで、本作としては異色の曲かも。だからこそ印象に残るともいえるし貴重な疾走曲でもあります。

#9 "Disconnected Magnetic Corridors" は物悲しいメロディがゆったりと流れるスローチューン。ヴォーカルもクリーンなノーマルヴォイスで、バラードと言っても差し支えないのではと思います。しかし前にも書いたと思うんですが、Hypocrisyがこういう曲をやると、なぜかPink Floydっぽくなるんですよね。ベースのミカエル・ヘッドルンドは好きなバンドの1つにPink Floydを挙げているので、もしかしたらその影響かもしれない。

#10 "Paled Empty Sphere" もヘヴィさと浮遊感、荘厳さが同居したバラード。王道のバラードながら、どこか宇宙的な広がりを感じます。

こうして聴くとテンポを抑えた曲の方が圧倒的に多いんですが、ヴォーカルの凶悪さ、メロディの美しさなどデス/メロデスの枠を超えた多彩な要素を含む作品になっています。このあたりから彼らは安定期に入ったと言えるかも。





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